こんにちは、yoshikoでございます。
続・
ルイツ・デ・カルデナス
***ストーリー編***でございます
♪
シニョール・カルデナス(カルデナス氏)のワイン造りストーリーは、
今から約30年前(1979年)、ここ
カステッジョにて始まりました。
「オルトレポー・パヴェーゼの歴史」にても書きましたが
その当時、この地は
「北緯45度に位置する、偉大なワインを生み出す場」と注目され、
それまでの“
量を重視した栽培法”から転じて、
“
質を重視した栽培法”が研究され、広まり始めていました。
その中で、カルデナス氏もまた独自に
ピノ・ネーロ種における新たな道を、切り開いて行かれるのです。
その新たな道とは、
ピノ・ネーロ種の赤ワインへの醸造。
それも
超高品質な赤ワインを造り上げることです。
カルデナス氏は、これを試み、その研究の成果から
現在のオルトレポーへ新たな可能性をもたらせている
数少ない先駆者のお一人です。
ここオルトレポーにおけるピノ・ネーロ種栽培の歴史はとても古く
土地の風土が適していた為に、長い間伝統的に栽培され続けてきました。
しかし
そのほぼ全てが白ワインやスプマンテへ醸造されるのが
この土地の風習となっていたのです。
(現在、この伝統と品質が認められ、
ピノ・ネーロ種から造られるスプマンテがDOCGに昇格(2007年モノより)。
この話は、また改めて特集を組みたいと思います。)
その為、現在では当たり前のように行われている
高品質な赤ワインへの醸造の歴史は意外にも浅く、
カルデナス氏の取り組みは、まさに新たな挑戦だったのです。
ピノ・ネーロ種といっても、非常にたくさんのクローンが在りますが、
高品質な赤ワインを造るのにふさわしいクローンは大変繊細です。
小さな房、粒が密でコンパクト、皮は薄く、生命力が繊細なのが特徴です。
もともと
高貴なブドウと呼ばれる故、高貴なものが持つ定めとして
大変デリケートで
希少なのです。
畑での栽培においても、
手がかかる上に
収穫量が少なく
一般の農家さんにとっては荷が重く、またその頃(1980年頃)までは、
この地域で生産されるワインは、大都市ミラノを中心とした地元の
テーブルワインとして消費されるのが普通でしたので、
赤ワインといえば、日常の食事と共に気軽に飲める
バルベーラ種やクロアティーナ種が主流だったのです。
しかし、カルデナス氏のワイン造りは販売目的でなく、
あくまでも情熱、趣味と研究要素がベースでした。
生産量にとらわれず、良いワインを造る目的に向かって進められました。
1979年、まず、最適な土地を見つけ、
高品質のクローンを植え、初のクリュー畑を作りました。
しかし、この条件だけではまだ良いワインは生みだされません。
ここからの人間の関わり方が、良いワインを生み出す上で重要なのだと
氏は自ら醸造に取り組んでいきます。
9年後(1988年)、2番目のクリュー畑を持ち
新カンティーナを構え、更に研究を進めていきます。
その6年後(1994年)、3番目の畑を持ち、
所有畑は計5ヘクタールとなります。
全てが、クリュー畑となり
各畑ごとに、そのブドウの特徴が活かされたワイン造りが行われます。
また、カルデナス氏は長年の職業上の経験から
物事を”専門的に”手掛けていく方向をとります。
その為、ブドウ栽培に関してもご自身の扱う品種を絞り、
ピノ・ネーロ種と
シャルドネ種(ピノ・ネーロ種のファミリーなので。)の2種のみ。
(彼が生み出す7種のワインは続編にてご紹介致します。写真は、
シャルドネ種。)
現在、全オルトレポーでは計2500ヘクタールでピノ・ネーロ種が栽培されており
イタリア国内第1位、世界では第4位の生産量です。
(シャンパーニュ、ブルゴーニュ、オレゴンに次ぐ。)
そして、赤ワインへの醸造を行うカンティーナも年々増えており、
新しいクローンの研究・開発も進められ、また更に品質が高まっています。
ここにカルデナス氏が先駆けて取り組み
及ぼした功績は大きいと思います。
そして、もう一つ。
カルデナス氏のストーリーにおいて、忘れてならないのが
ベッラーリアの
パオロ・マッソーネ氏との関係。
カルデナス氏がカステッジョに持たれた畑は
マイラーノという地区でした。
そこは、畑続きに代々ファミリーで栽培・醸造を行う
マッソーネ家に隣しています。
↓カルデナス氏のカンティーナ入り口から見た、
ベッラーリアのカンティーナ。
↓ベッラーリアのカンティーナ内から見た
カルデナス氏のカンティーナ。
地元で生まれ育ったパオロ氏は、若かりし頃カルデナス氏と出会い
(当時、パオロ氏は10代終わり~20歳代初めでした。)
氏より、多くの事を聞き学ぶ事で、今までに知らなかった世界を知り
広い視野を持つようになったと言います。
それが、彼自身のワイン造りへの革新となり、
また、オルトレポー地区全体への改革にもつながるのです。
現在、皆さんもご存知の通り、パオロ・マッソーネ氏は
オルトレポー全域のカンティーナを率いるリーダーであり
未来を担う造り手の代表者です。
以前にブログで触れた
「カステッジョD.O.C.」プロジェクトも
当初カルデナス氏の取り組んでいたものを、
今はパオロ氏が引き継ぎ、実現にあと一歩の所まで近づいています。
シニョール・カルデナスのオルトレポー・ワイン造りストーリーへの貢献は
おそらく多大な物です。
しかし、本物の紳士の人柄はでしゃばらず大変謙虚なので、
おそらく、この事への世間の評価も大変静けさに包まれており、
“地元を中心とした関係者の誰もが胸の中に尊敬の念を抱いている”
という範囲で留まっているように思われます。
そのようなところがまた、本当に偉大なのだと胸を打つのです。
次回は、そんなカルデナス氏の人物像に迫ってみたいと思います。
「No.3 人物編」へ続く